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進撃の巨人謎解き(ネタばれ注意)

2014年09月04日

今年の夏は色々と忙しく、SLにもAvilionにもすっかりご無沙汰しています。

とあるきっかけで、いまさらながら『進撃の巨人』を読みました。Avilion(中世ファンタジーロールプレイングのSIM)好きの僕を引き込む中世の雰囲気があり、謎が謎を呼ぶ展開のファンタジーですっかりはまってしまい、最新の14巻までいっきに読みました。『1Q84』しかり『HARRY POTTER』しかり、謎+ファンタジーは大ヒットの方程式になっていますね。

謎が膨らむと解きたくなるのが人間のサガです。今回は、Avilionからちょっと離れて、まだ不明な点が多い『進撃の巨人』の世界を現在公開されている情報で組み立て、その謎に迫ってみたいと思います。
※ネタバレ注意です。また、あくまでも推論です(まったく外れていたら別のストーリーを楽しんだ?ということでご容赦を)。そして、長文です(『進撃の巨人』を読んでいない方にはまったく意味不明な記事です)。

進撃の巨人謎解き(ネタばれ注意)

主人公のエレンが夢から目覚める2000年前、人類は2つの画期的な技術革新によって大きな転換点を迎えていた。

1つは、遺伝子を自由に操作して細胞を作り変え人間から巨人すら生み出す技術。

もう1つは、記憶を自由に操り子孫に継承する技術。

それらの技術を得たレイス王政府は、1900年間にわたる世界大戦と環境破壊の幕を開けることになる。

遺伝子工学は人間を生物兵器に変え、それらは以下のように分類される。

1.普通の巨人
人間をひたすら食べるだけの単純な生物兵器。人間に巨人化薬(遺伝子操作薬)を注射して作られる。巨人化すると人間としての意識をほとんど失い、人間に戻ることはできない。光をエネルギー源とし、うなじの弱点を破壊されない限り、半永久的に人間を狩り続ける。光がないと活動できないが、巨人化して数日は人間の体をエネルギー源として活動できる。巨人の子孫であるユミルの民の遺伝子をもとにして開発された。そのためユミルの民は人類から忌み嫌われるようになる。

以下の2~6は、巨人になっても人間に戻ることができる。王に選ばれた者に巨人化能力が組み込まれ、それは子孫に継承された。しかし子孫は巨人化薬を注射しないと巨人になれず、また巨人化能力を持った人を食べないと人間には戻れない。エレンとアニは父親を食べて人間に戻れる巨人化能力を獲得した。

2. 座標(エレンが継承)
巨人の攻撃目標(座標)を示す。普通の巨人を操り、敵に指定した対象を攻撃させる。いわば巨人の司令塔として重要な役割を担う。

3. 鎧の巨人(ライナーなどが継承)
攻撃を主目的とした巨人。全身を鎧のように硬質化し、敵につっこむ先陣役を務める。

4. 超大型巨人(ベルトルトなどが継承)
防御を主目的とした巨人。硬質化能力で壁を作り出すこともできる。ウォール・シーナ、ウォール・ローゼ、ウォール・マリアは超大型巨人によって作られた。

5. おとり巨人(アニなどが継承)
普通の巨人をひきつけて誘導する能力を持つ。体の一部を硬質化できる。

6. 記憶の巨人(レイス王家が継承)
人間の記憶を操作する能力を持つ。加えて超大型巨人と同じ能力も持つ。統治の要とも言える能力でレイス王家が代々継承。

7. 守護者(アッカーマン家が継承)
巨人化能力はないが、遺伝子操作によって人間よりはるかに優れた運動能力がある。守るべき対象が記憶として先祖代々受け継がれ、ミカサは座標を守る役割を与えられている。エレンが誘拐犯に殺されそうになり、「戦え!」とミカサに命令したとき、彼女の脳に記憶され眠っていた能力が解き放たれた。先祖代々受け継がれる記憶は頭痛の原因となる。第1話でエレンが見た夢の中の少女は、2000年前のミカサの先祖だ。

上記のような生物兵器を駆使したレイス王政府は、1900年にわたる世界大戦を優位に進めた。普通の巨人を作るために敵国に伝染病を流行させ、あらかじめ開発しておいた抗体で治癒し、その後抗体と偽って巨人化薬を大勢の人々に注射して大量に巨人を生み出すという、まさに悪魔の所業まで行われた。
※「獣の巨人」はこの手法でコニーの村の住民を巨人に変え、グリシャ・イェーガーはこの抗体でハンネスの妻を治癒した。

レイス王政府が戦争にほぼ勝利した100年前には、人口は激減し、環境は破壊され、人類は滅亡の危機に瀕した。再び大規模な戦争が勃発すれば、人類絶滅は避けられない状況だった。

そこで人類存続のためにレイス王政府が選んだ方法は、

1.壁で人間を隔離
人類の最後の拠点に超大型巨人で壁を造り、内(人間)と外(巨人)に分け人間を団結させた。19万年間の狩猟採集社会を通じて備わった「身内に対して利他的で、対外的に非友好的」という人間の特徴を利用して、外敵を作り出し平和を維持しようとしたのだ。記憶の巨人である王家の3姫(シーナ、ローゼ、マリア)は他の超大型巨人と共に自ら人柱(巨人柱)となった。シーナはたまに壁を抜け出し、ヒストリアに本の読み聞かせをしている。エレンは先祖がシーナに会っていて、その記憶を継承している。ちなみにウォール教は、壁を神聖化することでその秘密を守る役割を担っている。

2.記憶を改ざん
記憶の巨人(シーナ、ローゼ、マリア)を使って、遺伝子工学など人類を滅亡の淵へと導いた科学技術や歴史の記憶を改ざんした。それらの秘密は封印され(イェーガー家の地下室に)、暴こうとすると憲兵団(後述)に抹殺される。壁の中では王家や中央第一憲兵団、ウォール教の一部、そしてグリシャ・イェーガーしかその秘密を知らない。王家といえども封印を解くことは制限されている。ウォール・マリアの陥落に恐怖したロッド・レイスは、いざというときに過去の技術を復活させられるように記憶の巨人である娘のヒストリアを手元に置こうとしたが、中央第一憲兵団に阻止された。

3.兵団を創設
壁内での警察業務と、王の近衛兵を担う「憲兵団」、壁の補強や警護を行う「駐屯兵団」、壁外の調査を行う「調査兵団」を創設した。
憲兵団内でも中央第一憲兵団は秘密警察のような組織で、平和を維持するために歴史の秘密を守り、兵器を生み出す科学技術の発展を抑制する使命がある。
調査兵団は常に外敵である巨人の存在を人間に意識させ団結させる役割を担う。

このような方法によって100年間、人間は歴史上初めて戦争をせずに平和を享受したが、超大型巨人と鎧の巨人が突如現れ、ウォール・マリアが陥落したところから、この物語が始まる。

壁外の人類は全滅したと考えられていたが、実は巨人化能力を持った人間が生き残り、彼らが新人類として新世界を創造するべく動き始めたのだ。

彼らにとっても普通の巨人は天敵で、それを無尽蔵に生み出す可能性がある人間は滅ぼさなければならない存在だ。そのためにライナー、ベルトルト、マルセル、アニが戦士として人間の最後の拠点に送り込まれた(マルセルは途中でユミルに食われた)。彼ら以外にも人間に敵対する巨人化能力者の勢力があり、遅かれ早かれ人間は滅亡するとライナー達は考えている。

ちなみに、環境破壊、地球温暖化(巨人が発する熱も温暖化を促進した)によって人類は北へ北へと追い詰められ、最後の拠点は北極に近い。したがって巨人はかならず南から来襲する。壁の中には100年前までの優れた科学技術を駆使して自然豊かな環境を再現したが、壁の外はほどんどが不毛な大地となった。

さて、当初は人間の全滅を目的としていたライナー、ベルトルト、アニだったが、エレンに座標の可能性を見て作戦を変更した。座標を手に入れれば普通の巨人は脅威ではなくなるからだ。また、普通の巨人を発生させ、襲われないどころか操ることができる「獣の巨人」を目の当たりにして、自分たちが手を下すまでもなく人間は滅びると考え、故郷に帰る決断を下した。

しかし、すんでのところでエレンの連れ去りに失敗し、座標が人間側に奪われるなら殺したほうがましと巨人を投げつけるが、それもかなわずユミルに助けられて逃走する。ユミルはユミルの民を庇護してくれたシーナ、ローゼ、マリアの血族であるヒストリアを守ることを生きる目的としていて、悲惨な未来が待ち受ける壁の中から彼女を連れ出そうとした。だが座標が人間側に渡ったことで壁の中でもヒストリアが生きていけると考え、彼女を残し自分を犠牲にしてライナー、ベルトルトを助ける決断をした。

一方、壁の外に巨人化能力者の敵が存在することを認識した王政府も100年続いた仕組みの変更を迫られていた。鍵をにぎるエレンとヒストリアを中央第一憲兵団に誘拐させ、来るべき外敵との戦争に備えようとする。
そして、巨人の恐怖を人々に忘れさせないという「調査兵団」の存在意義がなくなり、その革新性は危険ですらあるので、解散へと追い込もうとする。

……と、想像力を全開にしてくれる『進撃の巨人」は面白いです。続きがとても楽しみです。

Posted by Ranger F at 01:01│Comments(2)


Comments
進撃の巨人のサイトを運営している者です。メールありがとうございました。
記事の方たいへん興味深く拝読させていただきました。

本編では「記憶を操る」という仕掛けが出てきてしまいましたので、メタな舞台装置としては何でもありなわけです。
100年前に人類が滅びたというのも全部嘘かもしれない。
文書で残っているもの以外は全てが植え付けられた記憶かもしれません。

記憶の改竄というのは物語のピースとしてはある種「禁じ手」です。夢オチや幻覚ネタと似たようなものでしょうか。改竄されている歴史をいくら真面目に考えてみても所詮はお釈迦様の手の内から外には出られず、作者という神と対等のフィールドには立てないことが、読者にとっては徒労感をもたらします。どんな無理なこじつけでも「記憶の改竄により~」と言われたらそれでカタがついてしまうからです。

「進撃の巨人」は伏線の張り方が巧みで、長期スパンでの構成はよく練られています。超大型巨人の正体が作中で最も存在感のなかったベルトルトであったこと、ユミルの名を持ち重要な役割の少女がずっと名無しのモブ扱いだったこと、あの時のあの場面はそういうことだったのかー!と無理なく驚かされ、作者が言うところのロングパスはとても気持ちよくスッと通っています。

私は記憶の改竄というワードが出てから個別の設定についてあれこれ考察することはしていませんが、今後の展開も期待しつつ見守って行きたいと考えています。また記事をお書きになったら教えてくださいね!
Posted by nosmo at 2014年09月07日 13:51
コメントありがとうございます! お読みいただいて光栄です。

おっしゃるとおり、記憶の改ざんという禁じ手ともいえる技が出されているわけですが、『進撃の巨人』では、それすら読者をがっかりさせるのではなく物語を面白くしているのではないかと思います。

伏線を張り巡らせ、みごとなロングパスを繰り出さすことで、なぜ記憶が改竄されたのか? どのように伏線につながるのか? といった興味が大きく膨らみます。これほど伏線をたくさん出すと「何でもあり」にはならないわけで。

ジョージ・オーウェルの『1984』では、改ざんされた人々の記憶、つまり改ざんされた歴史の謎解きが読者を物語りに引き込む大きな仕掛けになっていました。『進撃の巨人』でも改ざんされた記憶をめぐる謎解きが物語をますます面白くしてくれると期待しています。

今後の『進撃の巨人』の展開、nosmoさんの記事をとても楽しみにしています。
Posted by Ranger FRanger F at 2014年09月07日 19:12
 
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